RED WING × NIGEL CABOURN “MUNSON B-5 CHUKKA”
他ブランドとのコラボレーションを滅多にしないブランドとして知られる RED WING(レッド・ウイング)社。
それは、異った業種かつ異った文化を持つ、2つのブランドがコラボレーションをして、双方のアイデンティティを 1つの商品に体現するのは、簡単なことではないと考えているからです。
ブランドがコラボレーションをするには、お互いがその道のスペシャリストとして妥協の無い活動を行っており、理解し合い、リスペクトし合うことが出来なければならないと信じているのです。
ヨーロッパを中心としたミリタリーウェアの歴史を追求し、それらをベースに現代の消費者に合うウェアを展開する NIGEL CABOURN(ナイジェル・ケーボン)と、アメリカで 110年以上もの間、伝統に基づいたワークブーツを造り続けている RED WING は、そうした希有な組み合わせとして、再びコラボレーションに取り組むことになりました。
まず、このコラボレーションを語る上で外せないのが、MUNSON LAST(マンソンラスト)と呼ばれるシューラスト(木型)。
1912年、マンソン博士がワシントンの陸軍学校の軍隊衛生学の教授であったとき、歩兵部隊用ブーツのために開発したシューラストが “マンソンラスト” です。
彼は 4年の歳月をかけて、約 2000人もの兵士の足を調べ、靴のフィッティングについて調査をし、このマンソンラストを完成させました。
その後、ミリタリーブーツのラストとして制式採用され続け、現在でも一部のミリタリーブーツに使用されています。
マンソンラストの最大の特徴は、足の指先のならびに沿うようにつくられた、つま先部の形状にあります。
つま先部の中心から親指かけて大きく膨らむようにつくられたこのラストは、足先を強く締め付けることがありません。
外反母趾やハンマートゥといった、靴が足に正しくフィットしていないことが原因となる病気が起こりにくい設計となっています。
また、つま先のデッドスペースを無くすことで、ソールや中底、アッパーレザー等の浪費を防ぎ、靴を軽量化することも考慮してデザインされています。
このように、マンソンラストは見た目の美しさよりも兵士達の足を守ることと、戦場で求められる機能性を追求してつくられたラストです。
第一次、第二次の両世界大戦時期にミリタリーブーツを製造していた RED WING は、このマンソンラストをワークブーツにも採用していました。
ワークブーツとミリタリーブーツはどちらも耐久性、機能性に加えて、足を保護することを重視してつくられています。
その為、ミリタリーブーツ用のマンソンラストは、ワーカー達にも広く受け入れられたのです。
1928年の RED WING のカタログに掲載されているワークブーツは、その半数以上がマンソンラストでつくられていました。
MUNSON B-5 CHUKKA
2012年の Dr.マンソンブーツに続く、RED WING と NIGEL CABOURN のコラボレーション第二弾は、第一次世界大戦時にイギリス軍のコンバットブーツとして造られていた B-5ブーツに着想を得て、それに両ブランドのテイストを加えてチャッカブーツに仕上げた “マンソンB-5チャッカ” です。
元々イギリス軍の B-5ブーツは、6〜7インチ程度の丈の外羽根式プレーントゥブーツ。
先芯(*)を使わない柔らかなつま先を持ち、三条ステッチで縫われたライニング無しのクォーター(靴のサイドパネル)は履き口で切りっぱなしに仕上げられ、ヒール部のカウンターポケットがクォーターの外側に縫い付けられるアウトポケット方式が採用されていました。
また、ソールは当時の革靴が殆どそうであったようにレザー製で、グリップと耐久性を良くするため底面にホブネイル(スパイク)が埋め込まれていました。
※先芯 = 靴のつま先の形状を維持するために、つま先のアッパーレザーとライニングの間に入れられる、樹脂またはレザー製のパーツ。
このイギリス軍の B-5ブーツをチャッカブーツに仕上げるにあたり、RED WING と NIGEL CABOURN は、このイギリス軍ブーツと同時代にアメリカ軍で使われていたミリタリーラストであるマンソンラストを用い、B-5ブーツ同様に先芯を使わない仕様とし、その時代にアメリカのワークブーツの主流であったつま先のスタイル、キャップトゥを採用。
マンソンラストは、本来つま先の高さがあるタイプのラストですが、先芯を使わずに仕上げたことで、そのボリューム感は控えめで、また履きこむと少しずつつま先が低くなっていきます。
履き口のコバは B-5ブーツと同様の切りっぱなしで仕上げ、アウトポケットを RED WING 社が 100年近く使い続けているピューリタンミシンを使って三条ステッチで縫いつける仕様となっています。
ソールは、レザーベースにグリップと耐久性が良いラバータップ(ソール前面のハーフラバー部分)をプリセットした、グロコード・メダリオン・ソール。
元々のグロコード・ソールは、1920年〜30年代に RED WING 社が使用していた滑り止め用コード入りのラバーソールです。
今回使われているレザーベースのグロコード・メダリオン・ソールのラバー部分のデザインは、当時のグロコード・ソールをモチーフとしたもの。
ウェルトには、スプリットリバース・ウェルトと呼ばれる、いわゆる立ちコバを使い、靴の全周をぐるりとソールに縫いつけるオールアラウンド・グッドイヤー製法とし、コバをステインで染めにて仕上げてあります。
レザーには、かつての英国軍のB-5ブーツに使われたオイルを含ませたスウェードレザーに似たラフアウトレザーであるホーソーン(ベージュ)「ミュールスキナー」と、ブラウンのクラスト(仕上げ前のベースレザー)にブラックの塗膜を施したブラック「クロンダイク」レザーを使用。
いずれのレザーも、RED WING 社の自社タンナーでなめし、仕上げられたものです。
ホーソーン「ミュールスキナー」は、オイルを入れたラフアウト(銀付きスウェードレザー)をワックスで仕上げたもので、靴のフィニッシュ工程でブラックのワックスバーを用いてバフがけを行うことで、ユーズド感とも言える独特の陰影を持たせています。
ブラック「クロンダイク」は、いわゆる茶芯のブラックレザー。
履いていくうちに、表面の黒い塗膜下のブラウン地が見えてきて、エイジングが楽しめるレザーです。
※ホーソン、ブラックともに、アッパーステッチのグリーンに合わせたレザーレースと、ブラウンの蠟引き丸紐の 2種類が付属します。
グリップ力に優れたグロコード・メダリオン・ソール、防水性に優れたスプリットリバース・ウェルト、そして、オイルがたっぷりと染み込んだタフなレザーの組み合わせは、ここ北海道の冬にも最適です。
NIGEL CABOURN のミリタリーに対する深い造詣と、RED WING 110年以上の歴史が融合した、両ブランド渾身のコラボレーションブーツ。
ぜひ、店頭で足を通してみて下さい。
ARCH HERITAGE 川上
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